鷹匠・鷹狩

はじめに

現在も日本では江戸時代当時の各流派等が存在します。
また、流派を名乗らず自分独自で調査・研究を試みながら鷹狩をしている方々も多数います。
本会の日本鷹匠協会は、一流一派にこだわることなく、わが国の伝統文化である鷹狩を続けると共に鷹匠の育成・猛禽類の調査研究を続けてまいりました。
しかしながら、残念なことに本会の鷹・隼等の調教等について邪道ではないか。と、批判する方がおりますが、日本の各地では都市開発が進みいろいろな 環境のなかで、鷹や隼の調教や訓練を余儀なくされているのが現状ではないでしょうか。住む場所等の違いによって自ずから調教や訓練の違いがあって当然ではないでしょうか。ご理解下さいますよう宜しくお願い申し上げます。

鷹狩りのすすめ

「鷹狩り」とは、猛禽類の狩猟本能を利用し、訓練した鷹と熟練した鷹匠(たかじょう)と、これに従う猟犬や犬引き、馬と騎馬者、勢子などのチームワークによって行なう狩猟方法である。
ヤブや林などに潜む獲物を犬が探し上空へ追い出す。鳥が舞い上がった瞬間の速度の遅いときに、鷹匠がすばやく鷹を放し獲物を捕えさせる。捕えて降下した鷹は獲物の上で闘争の疲れが回復するまで休んでいる、ほんの短い時間のうちに、鷹匠が行き、餌を与えて獲物から引き離し回収する。
鷹が捕えた獲物を主人である鷹匠のもとへ持ってくるという俗説は間違いである。
今日では、これらを鷹と鷹匠のみで行われることが多い。また鷹狩りの方法は、国柄・鷹匠の流派・使用猛禽類の種類・獲物の種類・猟場の状況によって異なる。
頑丈な嘴、鋭い目、太く強い首、厚力強い翼、強健な体、いかなる物も離さない鋭く巨大な黒色の釣爪、美しくき麗な高鳴。優雅に帆翔する姿、翼をつぼめ急降下する迫力ある姿、猛々しい採食行動。
ただ静止している鷹を見ているだけでも、趣あり、寿命が長い上に、調教した鷹は、むしろインコより大人しいので、手乗りには最適です。また手乗りにするだけであれば、短期間で養成できます。

鷹狩りの歴史

鷹狩りは紀元前千年代から蒙古・中国・インド・トルキスタンの広大な平野で既に発達していた。やがて、それはトルキスタン人によってペルシャに伝えられた。
そしてヨーロッパでは、紀元前400年頃貴族や聖職者などによって広められ、13世紀には最盛期となりハヤブサはこの時代のシンボルとなっていた。
我国には、仁徳天皇の時代(西暦355年)に大陸より伝えられ、朝廷を中心に王侯貴族の遊びとして栄えた。
江戸時代になると軍陣の演習や民情視察をかねて多くの大名の間で愛された。とりわけ好んで行ったのが徳川三代将軍・家光と八代将軍・吉宗で、江戸とその近郊に遠大な鷹場を設け、鷹匠役所を置き、鷹狩りに関する法律を定めていた。鷹は、もと朝廷からの御預り物だったので、将軍といえども御鷹ととなえるほど貴重なものであった。
こうして栄えた鷹狩りだが、1490年の銃器の発明により衰退し、近世には都市化・過密化する交通網・電線などに妨げられ、少人数によるエキゾチックな趣味として残るに過ぎなくなった。

使用猛禽類の種類と特性

鷹狩りに用いる猛禽類の種類は、獲物の大きさや性質などによって次の通りに異なる。
ヒバリやツグミなどの小鳥には小型なハイタカが、キジ・ヤマドリ・カモ・ウサギなどには中型のオオタカが用いられる。
両種は、広くやや短めの翼と長い尾を持つことによって、森の木々の間を素早く身軽にすり抜けて獲物を追跡でき、主に中空で横合いから獲物をさらう。
中・大型鳥類やウサギから仔鹿までの哺乳類は、クマタカやイヌワシが用いられ、イヌワシの長く幅広い翼は拡げると2メートル近くにもなり、高空を帆翔し獲物を見つけると翼をすぼめて急降下して捕える。
両種は大型ゆえに維持管理が大変なため扱っている人は僅かである。クマタカは非常に気が荒いが、より大型なイヌワシは比較的大人しく調教しやすい。
空を羽ばたく鳥類、鴨や鳩などにはハヤブサが使用され、高空から獲物を見つけるなり、流線型のボディとぐいの後方に反った三日月刀型の翼を最大限に生かして、飛翔中の獲物に急降下し懸爪で蹴落とす。
ちょっとした狩りや渡りを楽しむには小型なチョウゲンボウが最適である。体型はハヤブサに似るが、狩猟方法は異なり、超低空飛行で獲物に気付かれないよう近より捕える。
数秒間空中で制止できる鳥でもある。一般に管理・調教しやすく性能が良く醍醐味のあるオオタカとハヤブサが、いつの世でも多く使用されている。

管理について

鷹の管理は調教の基盤となるので大事を要する。四方を壁で囲い前面の上部に格子窓をつけた鷹小屋に収容し外部環境の影響を受けることのないようにして飼うわけである。
これが一面フェンスであると鷹は落ち着かず、自らフェンスに体をぶつけ痛めることになってしまう。
調教時間や日光浴の時間(夏の場合は早朝の1~2時間冬は昼を除く午前中)は外架にそえるのが良い。
鷹小屋を作ることが出来ない場合や場所がない時には、外架につないだまま飼うことができる。
室内で飼う場合は、鷹の糞が遠くまでとぶようになっているので、外架の下にテーブルクロスや広めに新聞紙などを敷くと良い。
管理に必要なものは、犬でいうと首輪である足革と引綱である太緒。移動や落ち着かせる時に使用する頭巾はスマートなものから装飾を施したものまで色々あるが、主にハヤブサ、鷲に使用し、海外では鷹にも使用している国もある。
鷹を拳に据えたり呼びよせる時に、鋭い爪から左拳を守るための皮手袋。合図を送るためのホイッスル。水を飲んだり水浴に必要な広くて底の浅い安定した水入れなどである。
使用革製品の全ては、伸縮が効き丈夫であるもの。
餌は普通一日一回、定めた時間に規則正しく脂肪の少ない新鮮な肉類を呼びよせて手から与える。

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